ここ数年、IT人材の不足がIT企業だけではなく、地方自治体などの公的機関においても特にDX人材の雇用が難しいといわれています。具体的にDX人材とは何なのか、採用や育成も含めてまとめてみました。
DX人材とは
DX人材はプログラミングや技術的なスキルや知見を持った人材、という曖昧な認識であるケースが多いようです。もちろん、プログラミングや技術的なスキルや知見の必要性はありますが、実際には、DXの推進は事業としてチームを編成して行なうケースが大半になるため、複数の役割が存在し、それぞれ求められるスキルセットも異なります。技術的スキルだけではなく、事業開発やビジネスプランニング、マーケティングスキルといったビジネススキルの観点も重要になってきます。
DX人材の主な職種と役割
DX人材は複数の役割やスキルセットがあるとしましたが、具体的にはどういった職種や役割があるのでしょうか。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の定義には以下の職種と役割が謳われています。
- プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格(CDO含む)
- ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う
- アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計を担当
- データサイエンティスト/AIエンジニア デジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析を担う
- UXデザイナー 顧客体験も含めたサービスやプロダクト全体のタッチポイントデザインを担当
- エンジニア/プログラマ デジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う
DX人材に求められるスキルと知識
前述した職種/役割から求められるスキルや知識は技術的なスキルや知見だけではなく、ビジネス的なスキルやソフトスキルもDXを推進する上では必要となってきます。
プログラミング言語・デザインツールスキル
ハードスキルとしてデータサイエンティスト/AIエンジニアやエンジニア/プログラマには言語スキルが必須となってきます。
具体的には、AI(機械学習、ディープラーニング)やWebシステムでも使用されるPython(パイソン)、データ解析・統計分析で用いられるR(アール)、機械学習や科学技術計算で用いられるJulia(ジュリア)、スマホアプリや企業の基幹システム、ロボット技術の開発など、幅広い分野で使用されているC++(シープラスプラス)やJava(ジャバ)、セキュリティ対策や暗号解析で使用されるHaskell(ハスケル)、ユーザー向けのフロントエンド画面で使用されるJavaScript(ジャバスクリプト)等があります。
また、近年ではメタバースを活用したDXプロダクトになると、ゲーム開発エンジニアには馴染みのあるUnity(ユニティ)やUnreal Engine(アンリアルエンジン)で仮想空間を構築するケースが多いです。
事業内容や役割によって適切な言語スキルは変わってきますが、ビジネスデザイナーやアーキテクトは適切な選択を求められます。
また、デジタルプロダクトを構築していく上で、利用ユーザーが直接触れるそれぞれのデジタルプロダクトに応じたインターフェース画面も重要です。早い段階で視覚化、検証ができるようモックアップやプロトタイプを作成するケースも多くなるので、UXデザイナーはデザインワークで使用されるケースの多いAdobe社のPhotoshop、Illustratorとの連携に長けているAdobe XD(アドビエックスディー)やブラウザ上でも稼働するFigma(フィグマ)など、非デザイナーも含めて共有やコラボレーションが出来るツールスキルが求められるケースが多くあります。
これらのプログラミング言語やツールはエンジニアやUXデザイナーでなくともどの言語で何が実現できるのか、などは理解しておく必要があります。
DX人材に必要とされる基本知識
前述した役割の中で専門的な領域については、専門的なスキルは必要になりますが、DXを推進する上で、自身の担当する役割とは異なる専門領域の知識もチーム間や様々なステークホルダーとのコミュニケーションをより円滑に進めていくため必要になってきます。
インターネットや周辺技術や業界の基本的な知識
どのような技術でどういったことが実現できるのか、どのようなリスクがあるのかという理解が必要になります。自身で構築ができなくとも、初心者向けの解説書や入門書で基礎的な理解を深めた後、海外の関連ニュースなどを調べるのも理解が早まると思います。
例えば
データサイエンスの知識
AI(機械学習、ディープラーニング)
IoTの知識
クラウドやセキュリティを含めたインフラの知識
UI/UXへの知識
海外も含めた既存の業界やマーケット、周辺市場の知識
既存の業界における法規制や慣習の知識
といったことも重要です。
ビジネススキル
代替されるべき既存の業界やマーケットの課題やニーズがどのようになっているのかを調査や把握するマーケティング力や、顧客志向で課題を捉え解決策をアウトプットできるUX観点での能力、試行錯誤を前提とした中での予算や人的リソース、スケジュールを管理できるマネジメント能力等が挙げられます。
例えば
データサイエンスの知識
AI(機械学習、ディープラーニング)
IoTの知識
クラウドやセキュリティを含めたインフラの知識
UI/UXへの知識
海外も含めた既存の業界やマーケット、周辺市場の知識
既存の業界における法規制や慣習の知識
といったことも重要です。
ソフトスキル
コミュニケーションスキル
どんな職種においても大切と言われるスキルですが、DXを推進していく上でももちろん重要です。特にDXにおいては不確定要素の多さによる捉え方の違いや異なるスキルセットや職種の仲間と共創していくケースが一般的なルーティンワークなどと比べても圧倒的に多くなるので、相手の立場や役割に応じて分かりやすく建設的にコミュインケーションしていくようにしましょう。
リーダーシップスキルとフォロワーシップスキル
こちらも一般的に幅広い業務で求められる能力ですが、自身の専門性が重要になってくる部分においてはより積極的に活かしていくことが専門的な立場においての役割をより高いものにできます。
周囲を巻き込みながら調整し協力を得られるよう、自身も周囲に対して建設的な意識を心掛けましょう。
課題解決スキル
目の前の課題を客観的に論理的に捉えて思考すること、上述したコミュニケーション力やリーダーシップを発揮し、関係者と課題を共有認識しながら建設的に道筋を立てながら進めていくことが重要です。
特にDXである以上、誰しもが未経験の領域になるケースは多々あるので、上手くいかないケースに直面するのは日常茶飯時になると思います。そんな時でも諦めず、継続して改善を行いながらやりきる意識持ち続けることが大切です。
当事者意識
プロジェクトや課題に対して、当事者として向き合い続けることで自然と自発的に深く課題に対して考えるようになってくると思います。当事者意識が深く考え、自発的な行動に繋がる為、大切になってきます。
柔軟性
DXである以上、現状を変えていく上で既存の慣習などと全く異なる意見が出てくるケースも出てきます。そんな時も頭ごなしに否定せず論理的に捉えてみましょう。また、進め方においても、上手くいかない試行錯誤が続く場合など、やり方自体を変えてみるなど角度を変えた思考や進め方も柔軟に課題に対応できる要素となります。
DX人材になるには。どのようにDX人材は育成されるのか
このようにDXを担う人材になるには、技術的なスキルや知見とビジネスにおいて必要とされるスキルや知見が求められてきます。
その為、自身の専門領域と異なる分野についてサイトで調べることや一般的な入門書を読んでみるだけではなく、その領域に精通している方の話を聞いてみるのはおすすめです。
更により必要になってくるのは実際に業務を通して学ぶ経験が最も大切になってきます。現在、ご自身が担っている業務から学べることも上記の中ではあると思いますが、それだけで無い場合、目的を持った形での転職や副業も視野に入れても良いかも知れません。
また、外部から採用する際も、あらゆるスキルや経験を持った方を闇雲に探すのではなく、具体的な役割と必要なスキルを定義した上で、ソフトスキルも含めたマッチングができるかを面接時に確認することが大切になります。